2016年11月21日

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ミソジニー女性に対する嫌悪・偏見ってなに?
トランプの勝利が明らかにしたこと

岡本明子(ReDEMOS / 大学院生)


アメリカ大統領選は、共和党候補のドナルド・トランプが勝利しました。トランプは、女性を負け犬と罵り、女は外見が全て女を働かせることは危険と公言するなど、ミソジニー女性に対する嫌悪や偏見、女性蔑視を体現したような候補者だったと言えるでしょう。このような候補者の勝利を、どのように捉えればいいのでしょうか。

 

前提として、アメリカ合衆国は、自由と平等という理念のもと異なる人種・民族・宗教が共存する社会であり、大統領は、単に行政府の長であるだけなく、その統合の象徴とされています。アメリカの分断を招く発言が散見される人物が大統領の地位ついたことの衝撃が大きい理由は、党派を超えて守ってきたアメリカの民主主義の根本が覆される事態だからです。たとえば、ジョン・マケインもミット・ロムニーもキリスト教宗教右派からの支持を強く受けていましたが、人種差別や宗教差別の発言などは謹んでいましたし、支持者の差別的な発言を戒めてきました。

 

ヒラリー・クリントンは最も大統領になる適格性があるとさえ言われていた候補で、そのキャリアを通じ、常に性差別と戦ってきた人物です。もし彼女が勝てばアメリカ初の女性大統領となっていました。その彼女が、統合の象徴を決定する大統領選において、女性蔑視を公表している男性に負けたということの意味は、決して軽くはありません。

 

今回の選挙結果にアメリカ社会の根強いミソジニーが関係していることは否めません。アメリカ社会には、ポリティカル・コレクトネス政治や社会から差別や偏見を失くそうとする取り組みへの不満を抱える層が存在し、彼らの存在はトランプの勝利に大きく貢献しました。そうした不満を持つ層については、女性の大統領を誕生させたくないという内面化されたミソジニーがあったという意見があります。

また、選挙戦中メディアはヒラリー・クリントンについて笑顔が足りない冷淡などと報じました。しかし、彼女が笑うと今度は計算高いと非難しました。男性候補であったら好意的に受け止められる要素であっても、上昇志向野心家といった言葉で形容されてしまうということです。

 

もちろん、ヒラリー・クリントンの敗因のすべてをミソジニーとすることは難しいでしょう。トランプの勝因として、その内実はともかくとしても、中間層の解体のすすむなか、従来の小さな政府/大きな政府といった政治的対立軸では回収しきれないニーズをすくいあげようとしたことが指摘できます。しかしその一方で、すでにアメリカの一部では、トランプ氏の勝利をもって排外主義的な行動をとっている人がいます。多かれ少なかれ、今回の大統領選で見られたミソジニーは、今後のアメリカ社会の重い課題となるはずです。

 

ミソジニストがアメリカの統合を体現すべき大統領の地位につくことは、アメリカの影響力を考えると、日本に住む私たちにとって決して対岸の火事とは言えません。日本の女性議員割合は193カ国中157位。加えて、女性蔑視的な言説が、一般社会やメディア、議会でさえ散見されるのが現状ですセクハラヤジなど

 

トランプの勝利をもって、日本に生きる私たちの前にもまた、女性の権利をめぐる諸問題が、喫緊の課題として現れているのです。トランプが選挙人団制度によって次期大統領になるからといって、トランプの言動全てを普通にしてはなりません。世界、そして日本で、フェミニズムが今まで以上に必要になるでしょう。

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