2016年10月9日

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TPP審議入り
経済効果は怪しく、打撃は大きい

森原康仁(三重大学准教授 / 経済学)


政府の言い分に比べ、期待される経済効果が少ない。
政府の数字はよく読むと10年間の数字で、GDPに対する寄与は0.66%にすぎない。

10月14日、衆議院でTPP環太平洋パートナーシップ協定承認案・関連法案の審議が始まりました。しかし、その経済効果はあやふやなものです。 2013年3月に発表された前回の政府統一試算は、TPP参加による経済効果として、輸出が2.6兆円、輸入が2.9兆円、投資が0.5兆円、消費が3兆円増えるとしていましたしたがって純輸出は3000億円減少する。これは10年間の数字であるうえに、GDP国内総生産への寄与はわずか0.66%にすぎません。誤差の範囲内です。しかも、生産拠点の海外移転が進んでいるもとでは、自由化で輸出が増えるとは単純には言えません。これは、この間の円安でも輸出が増えないという経験が示すとおりです。

政府の言い分に比べて、農林水産業に対する影響は深刻です。 農水省の試算にしたがっても、農業および関連産業食品製造業などの損失額は7.9兆円。

その一方で、農林水産業に対する影響は深刻です。農水省の試算にしたがっても、農業および関連産業食品製造業などの損失額は7.9兆円です。とくに地方は農業および食品製造業の比重が高く、打撃は深刻です。さらに、これらでは洪水防止効果など農業のもつ多面的機能が評価されていません。東京大学教授の鈴木宣弘さんは、こうした負の外部効果を織り込んだ総合的な経済寄与度はマイナスになると指摘しています。

単にグローバル化の是非ではなく、グローバル化の内実を問うべき。

経済効果が怪しく、華々しく宣伝ができないため政府は、TPP参加の意義として対中抑止を前面に掲げてきました。中国が台頭しきる前にアジア太平洋地域のゲームのルールを書き換えておこうというわけです。しかし、台頭する中国や東南アジアとの互恵的関係の構築を抜きして日本経済の成長もありません。経済産業研究所の川崎研一氏の試算によれば、中国をふくむASEAN+3とのFTA自由貿易協定のGDP寄与度はTPPによる寄与度の2倍近いのです。 なるほど、ヒト・モノ・カネの可動性が高まっている以上、多かれ少なかれグローバル化は進まざるをえません。しかし、重要なことはグローバル化の是非ではなく、グローバル化の内実です。TPPに代わる別のオルタナティブなグローバル化の形はありえます。近隣諸国との民主的・互恵的関係を構築することこそ私たちの生活にとって重要です。経済効果が不明瞭であるうえに、対中抑止という政治的思惑が強いTPPに強い懸念を感じざるをえません。

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